⑪吉方位に向ける

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 「吉相墓」は、お墓の正面を東・南東・南の吉方位に向けます。お墓の正面とは枠石の入り口の方向、または、枠のない墓所の石塔の正面の向きの事です。
 御霊(みたま)の祀りは、お祀りする正面の方向が大事です。例えば神社の本殿の多くは南向きで、“天子南面”より来ていると言われています。また、その次に多いのは東向きです。東は日の出の方角です。“日の出の勢い”とは、朝日が昇る様に盛んな勢いの事です。
 神棚を祀る方向も、東・南東・南向きが良いとされている事が多いです。お墓と仏壇も東・南東・南向きをお奨めします。
 神仏の祭祀も、先祖供養であるご先祖様の祭祀も同じです。本殿・神棚・本堂・仏壇の向きは考慮するが、お墓の向きだけ問わないのは道理が立ちません。
 陰陽思想では、陰には陽が、陽には陰が必要です。陰の極みであるお墓には陽の気が必要であり、吉方位に向けるだけではなく、午前中の陽光を樹木などに遮られずに、お墓の正面が受けるのが良い。  

 お墓を陰宅(いんたく)と言いますが、陰とは生者から見ての陰なので、私達から見て陰の位置にお墓があり、お墓の正面から陽光の陽の気を得るのが良いのです。
 西を陰の始め、北を陰の極と観ますと、私達から見て陰の西側にあるお墓は、正面が東に向き東からの朝日の陽光を受けます。陰の北側にあるお墓は、南を向き南中の陽光を受けます。これが陰のお墓が陽の気を得る吉相の方角です。
 これが、逆にお墓が西を向き、または、北を向いていたら、お墓の陰に陰を加える事になり、陰陽の配合に逆らう事になります。例えば、風に向かって走るとか、労の多い割に効果が少ない、努力した割に成果が上がらない、そういった逆様(サカサマ)の運に傾くと思って良いでしょう。
 西方浄土の思想から、西向きを良しとする説もあります。西方浄土にお墓が向く事ですが、私達から見て西側にお墓があって、東から拝礼する事が、西方極楽浄土の阿弥陀如来とご先祖様に、私達が手を合す方角になるので良いと考えます。

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