左上右下の祀り

㉚左上右下の祀り

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 左上右下(さじょううげ)とは、日本古来の左上座。つまり左側(向かって右)が上座という礼法のしきたりです。
 葬送儀礼において、通常の方法とは逆で行うことを「逆さごと」と言います。例えば、故人の旅立ちの衣装「死装束」を着せる際に、襟を左右逆にして着せます。
 しかし、お墓で男が向かって右に女が左の並びなのは、「逆さごと」ではなく、古来の左上右下の礼法によるものです。
 昔は左大臣・右大臣がいましたが、左大臣の方が位が上です。
 左上右下の礼法は、飛鳥時代に中国から伝えられたと言われています。
 天子南面という考え方により、夫婦が南を向いた場合、向かって右、それは日の出の方向が男の立つ位置。向かって左の日没の方向に、女が立つのが吉とされました。
 だから、日本古来は夫が左(向かって右)に、夫の右手側に妻なのです。
 京都など関西のお雛様はその伝統で、古来の並べ方に習い、男雛が向かって右に、女雛が向かって左になっています。  

 西洋では男女の位置が日本古来と逆です。西洋の儀礼では右(right=正しい)が上位の考えです。
 昭和天皇のご即位の時、洋装の天皇陛下が皇后陛下の右手側に(向かって左)に立たれて、それ以後「関東のお雛様は西洋式に右が上座に変更された。」との説があります。
 「吉相墓」は、左上右下の古来の祀りです。一番上座の左奥(向かって右奥)に先祖供養塔を建立します。その右隣りに、正面の左に夫、右に妻を夫婦墓で祀り。右の下座に向かって代々石塔を建立します。
 先祖の祀りは上下・長幼の順が正しいのが吉です。そして、日本古来の左上右下の礼法は、日本での祭祀(神・仏・先祖)に欠かされない重要なしきたりです。
 神様(御札)と仏様(像・掛軸)は中心を第一とし、中心の次は左(向かって右)。その次が中心より右側の順です。
 仏壇の位牌も日本古来の左上右下の祀りです。向かって右奥、即ち左上の上座に先祖代々の位牌を祀ります。

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