遺骨を大地に還す

㉛遺骨を大地に還す

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 法律で「埋葬」とは、死体を土中に葬ることをいう。また、「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
 「肉体を立ち退く瞬間から、あの世は始まるものと思うのは当然である。もしも何かの事情があって、たとえ身の中に宿ってはおらずとも、なお少しでもその牽聯(けんれん)を断ち切れぬ限りは、完全なる霊として拝みまたは祭ることができぬという心持があったのかと思う。」と、民俗学者の柳田國男は著述しておられます。
 大地に還すとか、土に還すとか、自然に還すと言いますが、それは人の形が無くなってこそです。骨壺の遺骨はまだ人骨であるという外形が残っています。
 霊が遺骨に留まるのは良くありません。形が無くなるよう大地に還し、霊(魂)と遺骨(魄)と別けます。そして、幽界の名が刻入された石塔に霊が宿ります。
 生前の俗名のまま祀るのは、霊界の者になっていない‟生の形”であり、遺体に執着するのは‟生に執着している形”であり、霊の浄化(成仏)の妨げと観ます。また、日常仏壇内に遺影を置くのは、‟生きている姿”を祀っているので良くありません。  

 また、遺骨に執着しない方か良いとしても、粗末にしているのは感心しません。
 例えば、異国の地で戦死して、遺骨が野ざらしにされているのは、良い感じはしません。その遺骨を収集して清浄な場所で弔いたい心情はお分かりになるでしょう。
 戦死して遺骨のない仏は沢山おられますが、その霊を祀り供養します。
 骨壺をカロートや納骨堂に収めるのは、お参りが無くなったら、そこに遺骨を置き去りにして、粗末にしていることです。そして無縁に成ったら、他人の手を煩わして、遺骨を土に還すことになります。
 遺骨は清浄な墓所で土に還すことが、粗末にしない良い方法だと思います。
 「吉相墓」は、遺骨式土葬で石塔の本や墳墓に埋葬し大地に還します。
 亡骸を母なる大地の子宮に還帰させて、死者が浄土に生まれることや輪廻転生、また、家庭に子孫が生まれることなど「再生を願う形」であると言えましょう。

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