敬神崇祖

㊱敬神崇祖

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 神道では仏教と違い、各家庭のお墓を神社の敷地内に建てません。神道では「死は穢れ」だからです。しかし、神宮も社も寺も廟も墓石も霊璽も位牌も、霊魂を祭祀する点に於いては変りがありません。祭祀の形や名が違うだけです。
 神道のお墓は奥津城(おくつき)と言います。また、位牌は霊璽(れいじ)、仏壇は祖霊舎(みたまや)、戒名は諡号(おくりな)と言います。
 供養を神道的に言うと、鎮魂や慰霊などになります。神道ではお線香をあげないため香炉は置きません。
 江戸時代の檀家制度では、必ず檀家寺に所属し、亡くなれば必ず仏式で供養していましたので、神式で故人を慰霊するのは明治からとなりますが、祖霊を祭祀することは我が国の固有の習俗(しゅうぞく=風俗や習慣)なのです。
 常世(とこよ=黄泉の国)と現世(うつしよ=顕界)の境にある千引岩(ちびきいわ)が、日本の墓の起源と言われています。  

 「吉相墓」は、夫婦和合が家系のために大切なので、夫婦墓(めおとばか)で父母を祀り、夫婦神(めおとがみ)でもあります。
 また、五輪塔の空風火水地で天地自然の徳、すなわち、自然神を敬います。
 そして、五輪塔にご先祖様を祀り崇める「祖先崇拝」です。家の守護神となったご先祖様からの守護を頂きます。
 故人の霊は祖霊に加わり、家の守護神となって、子孫を見守ります。
 ‟みたまのふゆ(恩頼)”とは、ミタマは御霊、フユは振るであり神様・ご先祖様の御力やお恵みです。
 「吉相墓」は、敬神崇祖(けいしんすうそ)であり、神の恩恵に感謝し敬い、祖先(家の守護神)を崇めます。
 常世と現世は相即不離(そうそくふり=互いに密接に関連していて離れないこと。)の関係にあり、顕幽一如です。
 現世での幸福は常世からの‟みたまのふゆ”により与えられると考えます。
 常世と現世の両方が良くありたい。常世の先祖を慰霊し崇めて、現世の家庭の守護を求め、未来の子孫繁栄を願います。

©Taketani,Yasunori 不許複製・禁無断転載